日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-081S
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学生ポスター発表賞 応募演題
クロチアニジンの幼若期/思春期/成熟期曝露が及ぼす遅発行動影響とその雌雄差
*加来 建之佐々木 貴煕原 健士朗種村 健太郎
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抄録

【目的】ネオニコチノイド系殺虫剤クロチアニジン(CLO)は昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、神経系の異常興奮伝達を引き起こすことで殺虫効果を示す。CLOは昆虫以外の生物には安全とされ広く用いられてきたが、近年では哺乳類に対しても毒性を示すという報告が複数挙がっている。また化学物質に対する感受性は雌雄で異なることが知られているが、毒性評価の多くが雄のみを対象としており、雌雄を包括した研究は少ない。本研究では、幼若期や思春期あるいは成熟期におけるCLO曝露による遅発行動影響とその雌雄差を評価することを目的とした。【方法】80mg/kg のCLOをアセトン溶液に溶解し、2、6、10週齢の雌雄のC57BL/6Nマウスに強制単回経口投与した。なお、対照群には上記の溶媒を投与した。各群は13~15週齢および28~30週齢に、オープンフィールド試験、明暗往来試験、恐怖条件付け学習記憶試験からなるバッテリー式の行動試験に供した。【結果】13~15週齢に実施した行動試験では顕著な行動変調は観察されなかった。一方で28~30週齢に実施した行動試験では、2週齢投与群で雌にオープンフィールド試験における中央部滞在時間の低下と恐怖条件付け学習記憶試験におけるすくみ率の低下がみられたことから不安関連行動の増加と音連想記憶能の低下が示唆された。また6週齢投与群でも雌に恐怖条件付け学習記憶試験におけるすくみ率が低下したことから空間連想記憶能の低下が示唆された。13~15週齢に実施した行動試験では行動変調が観察されなかったことからCLOの投与影響は経時的に進行すると考えられた。また28~30週齢に実施した行動試験では雌にのみ有意に行動変調が観察されたことから雌において脳高次機能障害を誘発することが推察された。

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