日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-084S
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学生ポスター発表賞 応募演題
紫外光により劣化したマイクロプラスチックはオートファジー依存的な細胞死を誘導する
*真鍋 颯太芳賀 優弥辻野 博文生野 雄大淺原 時泰東阪 和馬堤 康央
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抄録

【目的】直径5 mm以下のマイクロプラスチック(MP)は環境中の至るところに存在し、ヒトはその曝露を避け得ない。環境中MPは紫外線や波などの外的要因により劣化し、構造や性状が変化してしまう。しかし現状、劣化状態のMPは勿論のこと、未劣化MPのヒト健康影響に関する知見すら皆無に等しく、リスク評価に資する情報の蓄積は喫緊の課題と言える。そこで本研究では各種毒性評価の一環として細胞毒性に着目し、未劣化および劣化MPの毒性発現機序の解明を試みた。【方法】中位径230 µmのポリエチレン(PE)粉末サンプルに波長172 nmの紫外光を空気中で照射することで実環境中の表面性状を模擬した劣化サンプルを作製した。次に作製したサンプルをマウスマクロファージ細胞株RAW264.7とヒト単球細胞株THP-1に曝露させ、毒性発現機序を評価した。【結果・考察】はじめに、PEが誘導する細胞死の種類を解析したところ、未劣化PE曝露群ではほとんど死細胞の増加は認められなかったものの、劣化PE曝露群においてプログラム的に制御された死細胞の大幅な増加が認められた。一方で、アポトーシス実行因子caspase-3の活性化は認められず、劣化PE誘導性細胞死はアポトーシス以外のプログラム細胞死であることが考えられた。続けて他の種類の細胞死の関与を追求する中で、劣化PE曝露群でLC3-II/LC3-I比が上昇することを見出し、オートファゴソーム形成が亢進することが示唆された。さらに劣化PEとオートファジー阻害剤の共処置は劣化PEの細胞毒性を有意に抑制した。従って、劣化PEが誘導するオートファジーは細胞死促進的であることが示唆された。現在、劣化PEによる細胞死誘導の分子レベルでのメカニズム解明を追求するべく、オートファジーの分解過程に着目し、劣化PEが分解基質やリソソームpHへ及ぼす影響について評価している。

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