日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-086S
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学生ポスター発表賞 応募演題
ヒトグリオブラストーマにおけるcystathionine gamma-lyase発現誘導を介した光線力学療法に対する防御応答
*三浦 恵子西 夏未篠田 陽高橋 勉秋元 治朗藤原 泰之
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抄録

【目的】光線力学療法(PDT)は、腫瘍親和性光感受性物質とレーザー光照射による光化学反応を利用し、腫瘍細胞内に活性酸素種(ROS)を発生させ、腫瘍細胞を死滅させる治療法である。我々はこれまでに、光感受性物質としてタラポルフィンナトリウム(TS)を用いたPDT(TS-PDT)が、悪性度の高い脳腫瘍の一つであるグリオブラストーマ(GBM)に対して抗腫瘍効果を示すことを明らかにしてきた。近年、抗酸化作用を示す生体内物質である活性イオウ分子種(RSS)が、抗がん剤を用いた化学療法の治療効果を減弱させることが報告されているが、TS-PDTの治療効果へのRSSの関与に関する研究は皆無である。そこで本研究では、TS-PDT がGBMのRSS産生酵素の発現レベルに与える影響について検討した。【方法】ヒトGBM由来T98G細胞をTSで2時間処理後、レーザー光(664 nm、1 J/cm2)を照射し、RSS産生酵素(CSE、CBS、3MST、CARS1およびCARS2)のmRNA発現レベルをリアルタイムPCR 法によって測定した。また、細胞生存率はCCK-8アッセイにより測定した。【結果・考察】TS-PDT処理したT98G細胞におけるRSS産生酵素群のmRNAレベルを調べたところ、CSEのmRNAレベルが選択的に上昇することが確認された。また、転写因子Nrf2をノックダウンしたところTS-PDTによるCSEの発現誘導は有意に抑制されたことから、TS-PDTによるCSEの発現誘導にはNrf2の活性化が関与している可能性が考えられる。さらに、CSE阻害剤(プロパルギルグリシン)処理によって、T98G細胞のTS-PDTに対する感受性が亢進することが判明した。したがって、GBMに対するTS-PDTの殺細胞効果に、TS-PDTによるNrf2の活性化を介したCSEの発現誘導が防御的に働いている可能性が示唆された。

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