主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
ヒト初回投与試験に参加する被験者の安全性を確保するためには,ヒト初回投与量の慎重な設定が重要である.ヒト初回投与量は,一般に最も感受性の高い動物種の無毒性量又は最小薬理作用量を基にヒト等価用量及び安全係数を考慮して設定される.再生医療等製品の開発に必要な要件については,日米EU各極の医薬品規制当局でハーモナイズされた共通の指針はなく,初回投与量設定の考え方は各極で策定された規制要件に準じている.そこで今回,再生医療等製品開発時におけるヒト初回投与量設定の考え方を理解するため,2022年までに日米EUの規制当局のホームページで公開されたヒト細胞/組織加工製品及び遺伝子治療用製品に関する通知を調査対象とし,各極の規制要件を比較検討した.
その結果,再生医療等製品のヒト初回投与量は,低分子医薬品やバイオ医薬品と同様,薬理試験を実施して有効性が確認できる用量に基づいて臨床用量を定め,その用量範囲を含む投与量を用いて毒性試験を実施して安全性を確認した上で設定することが,日米EU各極のガイドラインで共通した原則とされていた.しかしながら,再生医療等製品は細胞/組織加工製品や遺伝子治療用製品などの多様な先端的モダリティを含んでおり,製品の特性によっては当該原則の適応が困難で,非臨床試験に基づいたヒト初回投与量の設定が難しい場合も存在する.そのため,欧米のガイドライン等では上記の共通原則の限界に触れた上で,先行類似品目のデータや臨床経験等も活用できることなどが記載されていた. 現時点では,再生医療等製品のヒト初回投与量は,基本原則に加えてモダリティの特性や標的疾患を考慮して個別に設定することが最良であると考えられた.本発表では,日EU欧のガイドラインを比較し,各製品のヒト初回投与量を設定するための留意点について考察したい.