日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P2-179
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一般演題 ポスター
ラットにおける網膜電図を用いたHCN阻害剤の網膜ON-OFF経路障害の評価
*梅屋 直久稲田 拓宮脇 出
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抄録

【目的・背景】Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated channel(HCN)阻害剤であるIvabradineはヒトにおいて眼内閃光等の視覚障害を惹起する。この視覚障害が網膜のON-OFF経路の障害に起因している可能性が考えられたため、ラットにIvabradineを投与し、各光刺激周波数を用いた暗順応下でのFlicker刺激による網膜電図(Flicker ERG)測定を行った。

【方法】Long-Evans系ラットにIvabradineを4、12又は40 mg/kgで単回皮下投与し、投与後1.5時間にERG測定を行った。暗順応下において-2.0又は+0.5 log cd/m2∙sの光刺激強度で、光刺激周波数を1から20 Hzに段階的に変えてFlicker ERGを測定した。また、Flash ERG及び明順応下でのFlicker ERG測定も行った。

【結果】-2.0及び+0.5 log cd/m2∙sのいずれにおいても、光刺激周波数の上昇に伴い波形の振幅が用量相関的に減少し、特に中(5-15 Hz)及び高(20 Hz)周波数帯で顕著に減少した。Flash ERGや明順応下でのFlicker ERGでは振幅の減少は見られなかった。

【考察】暗順応下でのFlicker ERG測定では、低周波数域では視細胞以降の反応が、中周波数域ではON型双極細胞の反応が、高周波数域ではOFF型双極細胞の反応が得られ、また、-2.0及び+0.5 log cd/m2∙sの光刺激強度での測定では、それぞれ杆体及び錐体由来の反応が得られるとされている。これらの情報と本実験結果から、Ivabradineによるヒトの視覚障害は杆体及び錐体由来のON-OFF経路の信号伝達障害に関連している可能性が示唆された。

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