主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
核酸医薬品はクラスエフェクトとして臨床でインフルエンザ様症状等の炎症性の有害事象を起こしうることが知られており,その機序としてToll様受容体(TLR)を始めとする自然免疫系の刺激が疑われている.自然免疫活性化機構は,ヒトと実験動物で種差が大きいとされ,実験動物では臨床における作用予測が難しいと考えられることから,ヒトの末梢血単核細胞(PBMC)を用いて,in vitroで早期に臨床でのポテンシャルを検出可能な評価系構築を目指し,条件検討を行った.健常成人ボランティアの血液から調製したPBMCを,96 wellプレートに1×10^5, 2×10^5および4×10^5 cells/wellで播種して4種のTLRアゴニストを24時間曝露し,培養上清中のサイトカイン濃度を測定した.Poly(I:C) HMW(TLR3アゴニスト, 2本鎖RNA)は, IL-6,IP-10,MCP-1およびIFN-αを増加させた.R848(TLR7/8アゴニスト)は,IL-1β,IL-6,IL-8,IP-10,IFN-α,MCP-1およびTNF-αを増加させた.ODN 2006(TLR9アゴニスト, 1本鎖DNA)は,IP-10,IFN-α,MCP-1およびIL-8を,ODN 2216(TLR9アゴニスト, 1本鎖DNA)は,IL-6,IP-10,IFN-α,MCP-1,TNF-αおよびIFN-βを増加させた.サイトカイン濃度は播種細胞密度依存的に増加する傾向が見られたが,今回用いたいずれの播種細胞密度においてもTLRアゴニストによるサイトカインの増加作用は概ね検出可能であった.以上より,ヒトPBMCを用いて本試験で用いたサイトカインを測定することで,核酸医薬品による自然免疫活性化作用を評価可能なことが示唆された.