主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
【目的】Falcarindiol(FAL)はセリ科植物(ニンジン、セロリおよびミツバなど)に含まれる天然由来のジアセチレン化合物である。FALは様々な生物活性を有することが報告されている。当研究室ではFALにNrf2活性化を介した薬物代謝酵素誘導作用があることを過去に見出している。FALには抗炎症作用があることがよく知られているが、その作用機序の解明ならびにin vivoにおける抗炎症作用を検討した研究は少ない。本研究では培養細胞および病態マウスを用いて、in vitroおよびin vivoにおけるFALの抗炎症作用を検証し、作用機序としてFALの親電子性が抗炎症作用の発揮に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】FALは市販のセリ科植物から抽出・単離した。マウスマクロファージ由来のJ774.1細胞にFALを処理し、各種炎症マーカーのmRNA発現をリアルタイムPCRにより測定した。C57BL/6Jマウスにdextran sulfate sodium(DSS)を投与し、潰瘍性大腸炎を誘発し、FALによる抑制効果を評価した。
【結果および考察】FALを前投与した後、DSSを投与し潰瘍性大腸炎を誘発したところ、対照群と比較して下痢や下血に関する病態スコアおよび臨床症状(体重減少)の改善が見られた。また、TBARSやNO産生レベルの上昇もFALの投与により有意に抑制された。FALを前処理したJ774.1細胞では、LPS刺激によって上昇した炎症マーカーの発現が有意に抑制された。NO産生量およびNF-κB発現もFALの前処理により抑制されたが、FALとシステインを結合した付加体で前処理すると抑制効果は失われた。以上の結果より、FALはin vitroおよびin vivoにおいて抗炎症作用を示し、FALの親電子性部位が抗炎症作用の発揮に重要であることを明らかにした。