日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S13-3
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シンポジウム13: 医薬品における雄性生殖を介した発生毒性リスクの考え方
モデル動物体内動態情報から考えるサリドマイド類のヒト精漿への移行
*山崎 浩史清水 万紀子
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抄録

医薬品投与に関連する避妊の必要性等に関するガイダンスが、国内にて発刊されようとしている。催奇形性の懸念のある薬物を臨床適応する場合、女性側では妊婦禁忌とする一方、男性側には、雌性動物モデルでの知見に基づき、服用者の避妊規制がなされている。細胞膜を複数回透過する血液側から臓器側への物質移動は、薬物の物性値、すなわち分子量、脂溶性、イオン型分率を規定する酸解離定数など、化学構造に依存する受動的拡散をベースに、能動的な取り込みや汲み出し機構が加わることがある。演者は、本シンポジム座長の桒形らと共に、低分子医薬品サリドマイドをモデル薬物として、通常のウサギ単回あるいは反復経口投与に加え、雄性生殖を介したウサギ発生毒性試験試料中の薬物濃度を実測した。さらにサリドマイド類の培養腸管細胞、血液脳関門モデルと培養ヒト胎盤細胞系などにて双方向の膜透過係数を実測評価した。薬物動態学的には、血液から移行したサリドマイドとその代謝物の同程度の精漿濃度情報を基盤とし、それらに男性側体液量を乗じ、男性側から女性側に移行する薬物総量評価が本議論のポイントの1つとなる。本演題では、薬物動態の観点から、サリドマイド類の各種細胞膜透過係数と、ウサギ血液中から細胞膜透過後に精漿側に移行したサリドマイド濃度値を用い、精漿を介した医薬品毒性発現の可能性について議論したい。

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© 2023 日本毒性学会
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