日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S17-3
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シンポジウム17: ゲノム不安定性をみる~遺伝毒性研究のホットトピック~
変異原性(Q)SAR専門家判断の進歩
*三島 雅之
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抄録

治験薬に含まれる変異原性不純物を理由に、米国で何件ものクリニカルホールドが発生したのは2004年のことだった。ここから、欧米の製薬会社は変異原性不純物管理について真剣に取り組み始めた。変異原性不純物の発がんリスクを無視できる程度に抑制するには、通常の分析法では検出されない潜在不純物についても変異原性を確認し、陽性の場合には厳しい管理が必要である。しかしながら、すべての潜在不純物を合成してAmes試験を実施することは不可能である。そこで、Ames試験結果を被験物質の化学構造から予測しようという変異原性(Q)SARの利用が始まった。EMAが2006年に(Q)SAR利用を求めるガイドラインを、FDAは同様のガイダンス文書を2008年に公表し、欧米では医薬品開発における(Q)SAR利用は一気に世の中に広まった。国内では2015年のICH M7 Step 5まで(Q)SARが医薬品の申請要件になっていなかったため、 (Q)SAR利用は大きく後れをとった。今日では利用可能な(Q)SARツールが多数存在するが、計算結果を人間がレビューして補完することが求められており、毒性学者の理解と経験に基づく判断力が重要になっている。日本環境変異原ゲノム学会(JEMS)は2016年から毎年1回(Q)SAR関連ワークショップ(WS)を開催し、(Q)SAR開発者、製薬企業、規制メンバーが集まって議論することで、関係者の共通理解と評価力の向上を図っている。ここでは、トキシコロジストが(Q)SARレビューにどう取り組むべきか、継続的なWSの蓄積から見えてきた専門家判断のポイントを紹介する。

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