日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S35-3
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シンポジウム35: 【日本中毒学会合同シンポジウム】毒性学・中毒学における新技術と臨床
中毒診療における全身モニタリング法の現在とこれから
*Ryosuke TAKEGAWA
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抄録

 急性中毒患者は、中毒域を脱するまではABCDE(気道/呼吸/循環/神経/体温)の異常が突然生じうる。中には致死性不整脈のように不良な転帰に直結する場合もあるため、適切な患者モニタリングを行う必要がある。中毒診療で使用される各モニタリング装置は、他の疾患におけるものと基本的には変わらないが、中毒物質や患者状態によっては正確な測定ができないことがあるため注意を要する。中毒診療において、標準的および今後使用が検討されるモニタリング装置とそれらの使用に際し注意すべき点を解説をする。

 気道/呼吸モニタリングは、気道の開通性、適切な酸素化や換気状態の評価のために行われる。経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)モニターは、低灌流状態、異常ヘモグロビンの存在下などではその測定値が正確でないこと、そして “非侵襲的パルスCOオキシメータ”は、SpO2モニターで測定できないCOHbやMetHbなどの異常ヘモグロビンを測定できるとされるが、診断のために用いるには精度が不十分だと理解しておくべきである。

 循環モニタリング装置は、多数のものが市場に出回っているが、中でも12誘導心電図(ECG)は、QT延長や不整脈の認知に必須である。近年では、従来のQTc計算の問題点を改善した“QTノモグラム”や、ECGから中毒の原因に迫るために“ECGトキシドローム”という概念も生まれ提案されている。

 神経モニタリングは、①鎮静状態の評価、②脳損傷の程度および脳機能のモニタリングの2 つの意味がある。特に痙攣をおこしうる中毒では、非痙攣性てんかんを常に鑑別に考える必要があり、遷延する意識障害時には脳波検査や持続脳波モニタリングを行うべきである。

 集中治療を要する患者では体温コントロールの不良は不良な転帰と関係する。最も推奨されるのは深部温であり、血管内、食道または膀胱のサーミスタによって最も正確に測定される。

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