日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S36-2
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シンポジウム36: 途上国で「今」起こっている環境汚染とその毒性影響
アジア新興国における廃棄物および工業・生活排水に由来する有害化学物質汚染の現状
*国末 達也
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抄録

経済成長の著しいアジア新興国では廃棄物の増大が深刻化しており、不適正処理にともなう有害化学物質の環境中への放出、そしてヒトへの曝露が懸念されている。また、排水を介した化学物質による水域汚染の拡大と水生生物のリスクも危惧されている。そこで発表者の研究グループは、電気・電子機器廃棄物(e-waste)や使用済み自動車(End-of-Life Vehicles: ELV)に含まれる有害化学物質のpolybrominated diphenyl ethers (PBDEs)やhexabromocyclododecanes (HBCDs)などのハロゲン系難燃剤(HFRs)、そして生活・工業排水に混入し水生生物に対する有害影響が指摘されているPharmaceuticals and Personal Care Products (PPCPs)の汚染実態とリスク評価に関する研究を展開している。これまでの研究結果で、e-wasteおよびELV解体処理施設の作業場ダストからPBDEsやHBCDsを含む多様なHFRsと代替難燃剤として使用量が増加しているリン酸エステル系難燃剤(PFRs)の高濃度検出が明らかとなり、e-waste・ELV解体処理従事者はダストを介して相当量のHFRsとPFRsに曝露されているものと考えられた。また主要都市の河川水からは、下水処理施設で除去されるパラベル類が高濃度で検出された地点が存在し、生活・工業排水の直接流入が示唆された。加えて、ビスフェノール類やトリクロサンの高濃度汚染も複数地点で明らかとなっており、そのレベルは水生生物で報告されているNOEC /LOECから見積もったPNEC (predicted no-effect concentration)を超過していた。さらに、多くの医薬品類も検出されたことから、PPCPsによる複合曝露の影響が懸念された。

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