日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-20
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一般演題 口演
iPS細胞由来成熟心臓組織と機械学習を用いた薬剤性心臓障害に対する新規治療薬開発
*舟越 俊介佐々木 成子近藤 滋中 侑希今橋 憲一吉田 善紀
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抄録

心毒性は、ドキソルビシン(DOX)のような抗がん剤治療において、がん患者の生命を脅かす重大な副作用である。しかし、現在のところ、心筋障害を減弱させる有効な方法はない。本研究では、心筋細胞に対する薬剤の影響を評価するための、ヒトiPS細胞由来の成熟心室筋細胞や、心筋細胞と心外膜細胞を組み合わせた3次元成熟心室組織を用いたin vitroプラットフォームを開発し、また機械学習に基づく心筋障害の画像評価と組み合わせることによるハイスループットスクリーニングアッセイを確立した。2次元成熟心室筋細胞を用いてDOXによるサルコメア障害の定量化を行い、3次元成熟心室筋組織を用いてDOXによる心臓収縮障害の時系列変化の定量化、さらにはバイオマーカー探索を行った。次に、DOXで処理した成熟心筋細胞のサルコメア画像を、教師付き機械学習システムを用いて解析し、DOXによる心筋細胞障害を定量化する効率的な方法を確立した。この機械学習ベースの評価法は、心筋細胞のサルコメア障害を正確にスコア化することができ、DOX誘発心筋細胞損傷を用量依存的に定量化することを可能にした。この機械学習ベースの手法により、ハイスループットスクリーニングシステムを確立し、DOX誘発サルコメア損傷を減弱させる候補化合物を複数個同定した。さらに、3次元成熟心臓組織を用いて、これらの候補薬剤の中から、DOXによる心機能障害を抑制する心筋保護効果を持つ薬剤の同定に成功した。以上のことから、ヒトiPS細胞由来成熟心臓細胞、心臓組織は心毒性評価プラットフォームとして有用であり、さらに機械学習を用いた画像解析を組み合わせることにより、効果的な新規治療法開発において有用な技術になると考えられる。

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