日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-109S
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母体免疫活性化による神経発達影響評価における神経分化トレーサーマウスの有用性検証
*長平 萌花石田 慶士田中 雅己松丸 大輔中西 剛
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抄録

【目的】近年、妊娠期の母体免疫活性化(MIA)が神経発達症のリスクを上昇させることがヒト疫学調査により明らかになりつつあるが、化学物質の曝露に起因する発達神経毒性(DNT)にもMIAの関与が懸念されている。しかしながら、MIAを誘導する化学物質やMIA誘導性のDNTについては未だ不明な点が多い。現在、DNTの判定にはTG426などのガイドライン試験が用いられているが、評価に多くの時間・労力・実験動物を要するため、出生後早期での簡便かつ客観的な評価手法の開発が望まれている。本研究では、当研究室で樹立した神経細胞分化マーカーのプロモーター制御下でルシフェラーゼ(Luc)を発現する神経分化トレーサーマウス(Syn-Repマウス)のMIA誘導性DNT評価ツールとしての有用性を検証した。

【方法】Syn-Repマウス妊娠母体に対して合成二本鎖RNAアナログであるPoly(I:C)を児に行動異常が誘導される条件で投与し、MIA誘導モデルを作製した。生後21日目(P21)において産仔脳を回収し、ニッスル染色および各種抗体を用いた免疫組織化学染色により脳の組織学的解析を実施した。また、P4からP16まで同一個体における脳Luc由来の頭部発光をin vivoイメージングにより評価した。

【結果・考察】MIAモデルマウスの児では、ミクログリアの形態変化および活性型ミクログリアの増加が誘導されることが報告されている。脳における組織学的解析の結果、P21のPoly(I:C)投与群では対照群と比較して、海馬においてミクログリアとアストロサイト数の増加が認められた。更にLuc活性を指標に生後直後からの神経発達影響を評価したところ、Poly(I:C)投与群では対照群と異なるLuc活性の経時変化パターンを示した。以上の結果より、Syn-RepマウスはMIA誘導性DNTをミクログリアやアストロサイト数の変化のみならず、脳のLuc活性の評価により非侵襲的かつ経時的に検出できる可能性が示唆された。今後Syn-Repマウスが、MIA誘導性に関する知見が脆弱であるDNT研究において有用なツールになることが期待される。

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