日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-10E
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薬剤性肺障害における長鎖アシルCoA合成酵素4の役割の解析
*冨塚 祐希桑田 浩原 俊太郎
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抄録

【目的】長鎖アシルCoA合成酵素(ACSL)4は、アラキドン酸やエイコサペンタエン酸をはじめとする高度不飽和脂肪酸(HUFA)を良い基質とするアシルCoA合成酵素であり、膜リン脂質中のHUFA含有量を調節することで鉄依存的な細胞死であるフェロトーシスに関与することが知られている。我々はACSL4欠損(KO)マウスを用いた検討で、パラコートやメトトレキサートによる肺毒性が軽減することを報告してきた。本研究では、ブレオマイシン誘発性肺線維症モデルを用いて、線維化の過程におけるACSL4の役割を解明することを目的とした。

【方法】マウスにブレオマイシン3 mg/kgを経気管支投与することで肺線維症モデルを作製し、一定時間後に血中酸素飽和度(SpO2)を測定し、さらに気管支肺胞洗浄液ならびに肺組織を得た。摘出した肺組織中の脂質過酸化物はLC-MS/MSを用いて定量し、mRNA発現量はリアルタイムPCRで測定を行った。肺組織中のヒドロキシプロリンを比色定量した。肺組織からパラフィン切片を作製し、マッソントリクローム染色や免疫組織化学染色による検出を行った。

【結果・考察】ブレオマイシン投与後14日目以降では、WTマウスの肺でホスファチジルコリン(16:0/20:4)由来の過酸化体が増加したが、KOマウスではこの増加が有意に抑制されていた。同様に、投与後14日目にはWTマウスの肺組織で、線維症マーカーであるヒドロキシプロリンやα-SMA、ならびにE-カドヘリンやIGF-1のmRNA発現が増加していたが、KOマウスではこれらの発現は抑制されていた。さらにWTマウスではSpO2が投与後14日目から減少するが、KOマウスでは高値を維持していた。以上の結果から、ACSL4欠損によりブレオマイシン投与後の脂質過酸化物の生成は抑制され、この抑制により炎症反応や持続的な組織障害が軽減されたと考えられる。

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