日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-198
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SARS-CoV-2由来組換えスパイクタンパク質の心臓安全性評価
*柳田 翔太川岸 裕幸加藤 百合西田 基宏諫田 泰成
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抄録

【序論】新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するmRNAワクチンの接種等が進み、COVID-19による死亡数は劇的に低下した。一方で、ワクチン接種後に心筋炎等の発症が報告されており、ワクチンによる心臓への影響が懸念されている。しかし、mRNAから合成されるSARS-CoV-2スパイクタンパク質や、ワクチンに含まれるアジュバント(抗原性増強剤)による心筋細胞に対する影響に関しては不明な点が多い。そこで本研究では、ヒトiPS細胞由来心筋細胞(以下、ヒトiPS心筋)などを用いて、スパイクタンパク質やアジュバントの心臓安全性評価を行った。

【方法】SARS-CoV-2アルファ株、オミクロン株の組換えスパイクタンパク質は、日下部宜宏教授(九州大学大学院農学研究院)より供与された。アジュバントとしてMonophosphoryl Lipid A等を使用した。再分極遅延に関わるhERGチャネルの阻害作用は、hERG発現細胞を用いたオートパッチクランプ(ソフィオンバイオサイエンス)により測定した。ヒトiPS心筋はiCell心筋細胞2.0 (FCDI) を用い、細胞外電位は多点電極アレイシステム(アルファメドサイエンテフィック)により評価した。

【結果】スパイクタンパク質のhERGチャネル電流に対する影響を検討した結果、論文で報告されている血漿中に存在する濃度の1000倍以上を使用しても阻害作用は観察されなかった。ヒトiPS心筋を用いた実験でも、スパイクタンパク質による早期後脱分極の発生や再分極持続時間の延長等は誘導されなかった。これらの結果は、アジュバントでも同様であった。

【結論】これらの結果から、スパイクタンパク質やアジュバントは有意な心機能障害を誘導しないことが示唆された。今後は、心筋炎等の具体的な疾患とスパイクタンパク質との関連性について詳細に解析を進めていく予定である。

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