主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
【目的】
慢性腎臓病 (CKD)時の合併症のうち、特に心血管系疾患の発症は生命予後と深く関連している。このリスク要因の一つとして、CKD時に生じる「腸内細菌の乱れ」によって腸内での産生が増加するインドキシル硫酸 (IS)などの尿毒症物質が知られているが、血液透析による除去が困難であり治療法が求められる1。我々は過去にこの産生増加にビタミンA (VA)の蓄積が関与することを発見した。しかしながら、腸内産生がなぜ増加するのか詳細な機構は不明である。そこで本研究ではVAの免疫を成熟させる栄養素としての側面に着目し、腸内細菌由来物質の産生増加機構について解析を実施した。
【方法】
ICRマウスの腎臓を5/6摘出後、8週間飼育することでCKDマウス (5/6 Nephrectomy: 5/6Nx)を作製し、各種解析を行った。mRNAおよび蛋白発現量は、それぞれリアルタイムRT-PCR法、ウェスタンブロット法により測定した。
【結果・考察】
我々はVA不含給餌を行った際に、5/6Nxマウスで生じる免疫グロブリンA (IgA)分泌異常およびIS等の尿毒症物質蓄積を予防できることを発見した。これは、5/6NxマウスにおいてVAの蓄積が腸管免疫の異常を引き起こしていることを示唆している。そこで腸管IgA産生細胞を対象とした解析を行った結果、5/6Nxマウスではパイエル板における樹状細胞のレチノイン酸分泌が亢進し、IgA産生細胞への分化反応である胚中心反応が促進されることを明らかにした。さらに、阻害剤投与による本経路の抑制は、5/6Nxマウス腸管のIgA量およびIS等の血中濃度を低下させた。
【結論】
以上の結果より、VAおよびIgAを介した新たな腎-腸連関機構を解明した。本研究のさらなる解析が、新規治療薬の開発に繋がることが期待される。
【参考文献】
1. Fukuoka K, et al., Biochem Biophys Res Commun. 2023.