主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
本研究では、化審法の人健康影響に係るスクリーニング評価(以下、スク評)において、有害性情報が無く評価できなかった直鎖アルコールの1-ノナノール(C9)と1-デカノール(C10)について、構造類似物質の情報を利用したリードアクロス(RA)による評価を検討した。
はじめに、OECD QSAR Toolboxを用いてC9及びC10の構造類似物質を検索した。その結果、≥90%の構造類似性をもつ候補物質としてC5~C12の直鎖アルコールを抽出した。また、OECD SIDS (2006)でカテゴリー評価対象に含まれていたC16, 18, 22アルコールも構造類似物質候補とした。国内外の毒性評価書等から、スク評の評価項目である一般毒性、生殖発生毒性、遺伝毒性に関する有害性情報を収集した結果、一般毒性はC5, 6, 7, 12, 16, 18, 22に、生殖発生毒性はC7, 12, 18, 22にスク評に資する情報を得た。それらを精査した結果、高用量による摂餌量減少等が見られたが、標的臓器特異的な影響は認められなかった。従って、C9及びC10の一般毒性及び生殖発生毒性は、より短長鎖の直鎖アルコールの情報から内挿によりRA可能であり、最小のNOAELを採用することが妥当であると判断した。また、遺伝毒性については、C5~C22に関するAmes試験及びin vitro又はin vivo染色体異常試験はいずれも陰性であったことから、C9及びC10も両試験は陰性であることが類推できた。以上より、C9及びC10の一般毒性、生殖発生毒性の有害性評価値(有害性クラス)は、各々0.63 mg/kg/day(C6由来、クラス外)、0.13 mg/kg/day(C8由来、クラス4)、遺伝毒性はクラス外と評価した。
(本評価結果は我々の検討結果であり、厚生労働省の行政判断に関わるものではありません。)