日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-335
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一般演題 ポスター
ヒトiPS細胞由来マクロファージ導入3Dヒト皮膚モデルによる炎症応答評価
*山崎 雄大髙橋 千佳栗本 裕子石黒 主馬中園 一紀高柳 晋一郎森田 悠治冨永 光俊髙森 建二
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抄録

皮膚は生体の1次バリアとして外敵の侵入を阻む他、それを突破した外来刺激に対しても免疫細胞を中心とした炎症制御により生体恒常性を保っている。皮膚の刺激応答評価系は様々検討されているが、近年ではヒト生体皮膚環境を模倣した3Dヒト皮膚モデルの報告が増えている。しかし、炎症制御応答を担う免疫細胞を含む3Dヒト皮膚モデルは確立されていない。そこで本研究では、炎症制御における主要な役割が報告されているマクロファージ(Mφ)に着目し、新たな皮膚の炎症応答評価系としてMφ導入3Dヒト皮膚モデル構築を検討した。由来の影響を最小限にするためにヒトiPS細胞からMφを分化誘導し、炎症型、抗炎症型サブタイプへの分極剤を添加した結果、各サブタイプのマーカー遺伝子発現が認められたことから、誘導したMφは各サブタイプへの分極能を有することが示された。次に、多孔性足場材を基盤としてヒト線維芽細胞、ヒトケラチノサイトからなる3D皮膚モデルの培養過程にヒトiPS細胞由来Mφを組み込み、全細胞種が生存、機能できる培養条件を検討した。その結果、Mφ非導入モデルと同様の真皮層、表皮層からなる皮膚構造を有するMφ導入3Dヒト皮膚モデルの培養条件を見出した。真皮層においてMφマーカー陽性細胞も確認され、皮膚構造に影響を与えずにMφを導入することに成功した。さらに、3D皮膚モデル内のMφが免疫応答機能を有するか検討した結果、炎症性刺激を与えたMφ導入モデルにおいて、Mφ非導入モデルと比較して炎症性サイトカイン類の有意な産生上昇が認められた。本研究では、ヒトiPS細胞由来Mφを導入した3Dヒト皮膚モデルを構築することで、従来の免疫細胞を含まない3Dヒト皮膚モデルでは難しかった炎症応答評価が可能なモデルの構築に成功した。本モデルを用いた皮膚安全性評価への発展可能性も併せて議論したい。

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