日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-81E
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一般演題 ポスター
マイクロ流路デバイスとオルガノイドを用いた抗がん剤感受性・副作用評価システムの開発
*小林 由季滝口 創太郎川野 竜司小祝 敬一郎大松 勉臼井 達哉佐々木 一昭
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抄録

オルガノイドは複数種の細胞からなる三次元培養組織体であり、二次元で培養された細胞に比べて生体内組織に近い性質を持つ。オーガンオンチップシステムは灌流装置とマイクロ流体を用いた細胞培養方法である。これらの技法はin vitroで臓器の構造や機能を再現し、将来的に動物実験を代替する有力な選択肢として期待されている。

本研究ではより生体に近い環境で薬剤感受性試験や薬剤による副作用の評価を行うことを目的に、乳がん罹患猫から作製した乳がんオルガノイドやマウス由来の正常腸オルガノイドをマイクロ流路デバイスに搭載した後に、動物用抗がん剤であるトセラニブを灌流させ、非灌流時との比較解析を行った。

トセラニブ10μMを処置した培養液を9.5μl / minで48時間、猫の乳がんオルガノイドに灌流させた後に細胞生存率を解析したところ、抗がん剤を灌流させたオルガノイドにおいて生存率が顕著に低下した。また、トセラニブを灌流した猫乳がんオルガノイドにおいてp53やcaspase9などのアポトーシス関連遺伝子の発現が上昇していた。

次に、同じデバイスに乳がんオルガノイドとマウスの正常腸オルガノイドを搭載し、同条件でトセラニブを灌流させた。正常腸オルガノイドも乳がんオルガノイドと同様にトセラニブの灌流によって生存率が低下した。しかし、アポトーシス関連遺伝子の上昇は見られず、代わりにネクローシス関連遺伝子RIPK3などの発現が上昇していた。さらに、ネクローシス阻害剤であるHS-1371とトセラニブを同時に灌流させた腸オルガノイドではネクローシスが阻害され、生存率が上昇する傾向を示した。

これらの結果から、トセラニブの灌流によって乳がん細胞ではアポトーシスが誘導され、正常腸細胞ではネクローシスが引き起こされていることが示唆された。また、オルガノイドを搭載したマイクロ流路デバイスの有用性が明らかになった。

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