主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
ワクチン接種後の副反応に関する話題は、ここ数年間で一般の方々にとっても非常に身近なものになった。きっかけはもちろんmRNA新型コロナワクチンの国内承認である。承認前の臨床試験結果と同様に、接種開始後の市販後調査でも発熱や倦怠感の頻度が高いと示されたことが、かつてないスピードでの接種事業推進や高い接種率と共に連日報道された。従来モダリティのワクチンと比べると副反応発現頻度が高いことも、ワクチン有効率が高いこととのバランスから当初は受け入れられていた。しかし、有効率は時間とともに低下することが次第に明らかになり、「接種しても罹る」ことが問題視され、接種後の重篤な有害事象などもクローズアップされた結果、ワクチンに対する懐疑論が生まれた。これらの現象は、新型コロナワクチンに対する当初の期待の高さの反動としてはある程度避けられなかったものの、情報があふれる中で、例えば「副反応と有害事象の違い」「ワクチンを接種した後に有害事象が起こったという事実からどこまでのことが言えるか」など、ワクチン学あるいは疫学の視点からの基本的な考え方が共有されていなかったために混乱が生じた感は否めなかった。
本演題では、本セッションのテーマである「免疫毒性学から観たワクチン学」を議論するベースとなる、ワクチン接種後の副反応・有害事象に関する疫学研究の現状や課題について、自身が携わってきた研究事例も交えながら紹介する。