日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: W5-6
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ワークショップ5: DX 時代の毒性病理 ーAI 病理システムと病理ビッグデータへの取組みにおけ る課題と展望ー
H&E染色画像から空間的遺伝子発現量を予測する深層学習法とその活用戦略
*小井土 大
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抄録

空間トランスクリプトームは、組織上の位置情報を保持しつつ遺伝子発現量を網羅的に計測する革新的技術である。Visium(10x Genomics社)などの商用化された空間トランスクリプトーム手法では、測定値とH&E染色画像とを重ね合わせることができ、細胞の形態的特徴と遺伝子発現量の関連を解明できる。しかし、H&E染色画像から情報を引き出せるトランスクリプトーム研究者の不足や、高額な実験コスト、実験エラーによる遺伝子発現の部分的欠損、測定解像度の不足などが、空間トランスクリプトームデータの十分な活用の妨げとなっていた。これらの問題を解決すべく、我々はH&E染色画像を入力データとし、遺伝子発現量を出力データとする深層学習法(DeepSpaCE)を開発した(Monjo, Koido, et al. Sci Rep. 2022)。DeepSpaCEは上述の課題に対する解決策を提供し、空間トランスクリプトームの価値をさらに高めることができる。例えば、最低1回分の実験で、同一組織のH&E染色画像上で数十µm四方ごとに任意の遺伝子発現量を予測することも可能となる。DeepSpaCEはGitHub上で公開され、ユーザ自身の空間トランスクリプトームデータでの学習と予測も容易に可能である(https://github.com/tmonjo/DeepSpaCE)。本講演では、DeepSpaCEの恩恵とその予測能の限界にも触れ、毒性研究への応用可能性について議論したい。

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© 2024 日本毒性学会
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