抄録
【背景】
消防法第2条9項では「医療機関その他の場所へ緊急に搬送する必要があるものを救急隊によって、医療機関その他の場所に搬送すること」と明記されているが本人または関係者が搬送を拒否した場合はこの限りではないとされている。しかし救急隊が緊急を要すると判断したにも関わらず本人が明確に搬送拒否を訴え、現場活動で苦慮する事案が少数ではあるが見受けられる。今回は搬送拒否し、その場から動こうとしない男性を警察と連携し病院搬送まで至った事案を考察する。
【事例】
41歳男性、自宅にて睡眠薬を多量摂取したのち家を出た。家族より警察へ連絡され捜索中の警察官が屋外にて保護。道路脇に居座り動こうとしない。警察官からの救急要請となる。救急隊現着時より「病院へは行かない」と訴える。意識レベルJCS1、他バイタル測定の一切を拒否している。
警察官と共に病院に行くよう説得するも応じず、協議し警察官職務執行法の「強制保護」を適用。結果的に暴れることなく警察車両に傷病者を収容、救急救命士が警察車両へ同乗し病院への搬送に至る。
【考察】
強制保護、警察車両で病院に至ると言う稀な症例となりました。
今回現場滞在時間が極端に遅延してしまいました。
保護決定の段階で救急隊としてどうあるべきであったか。
救急出動件数の増加が進む昨今、活動時間の短縮の一助になることを期待する。