抄録
研究目的走っている糸による円筒の摩耗の実験では, 糸の張力を一定に保っていても, 糸道の発生進行にしたがって次第に接触圧力は低下する.それゆえ摩耗量の比較に当って接触圧力を考慮せねばならない.本報では糸の張力, 糸道の形状から全平均接触圧力を算出するための理論式をみちびき, 今後の実験結果の解析の便に供する.研究結果円筒の材質は接触圧力により変形せず, 糸道の断面の形状を円弧と仮定し, 糸と糸道との接触圧力分布を (1) 断面における2次元的圧力分布と (2) 糸の長さの方向の張力分布とに分けて考え, 現在までに得られている知識をもとにして, これらの分布にもっとも合理的と考えられる式を仮定して, 力のつり合の条件から, 全平均接触圧力の式をみちびいた.また圧縮弾性の影響を考慮するため, 同時にみかけの摩擦係数の理論式を同様にしてみちびき, これらの式を用いて実験結果を処理し, これをよく説明し得ることを示した.このようにして全平均接触圧力の式を得た.
