抄録
【目的】
在宅で生活する重度重複障害を有する児童生徒への特別支
援教育の訪問教育では、理学療法士(以下PT)が教員と協
働する役割も重要である。本演題では、訪問教育を受ける児
童生徒の課題に対して、どのようにPTと教員が各々の専門
性を理解しながら、日常的な同僚として連続性をもって発展
的に協働できるかを示す。
【方法、症例】
PTと担任(以下MT)は、訪問教育前後に授業中の生徒の
様子を映像と授業記録から分析し、授業内容と授業へのPT
評価の活かし方を確認した。その後授業にて教育効果を確認
した。事例生徒は、小学校3年生在籍時に「小脳出血による
遷延性意識障害」と診断を受け、中学部より特別支援学校肢
体不自由教育部門へ入学し訪問教育を受ける。訪問教育開始
時の横地分類(改定大島分類)はB1、GMFCSレベル5であ
った。PTは2012年度訪問教育全49回のうち3回、各回約2時
間の授業に同行した。授業中は生徒の身体的負担に留意し
た。
【倫理的配慮、説明と同意】
本発表にあたり、保護者、学校長、関係教員に発表主旨、
内容について承諾を得た。
【結果】
MTはPTとの協働により、生徒の達成感、主体性をより
活かす授業を行った。生徒は適切な環境下で感覚、運動に気
づき、自発運動を増やした。
【考察】
重度重複障害を有する児童生徒の訪問教育では、(1)個別
学習の利点を活かし児童生徒の反応を心身共に観察し把握す
ること(2)児童生徒の自発的な動きを拾い、意味づけを教
員と児童生徒が協働で行うこと(3)家庭生活に変化を起こ
す場であることを意識する。(1)~(3)を活かす為のPTと教
員の専門性を融合した関わりは、「子どもに寄り添う」教育
の視点に有益と考えられる。
【理学療法としての意義】
1.日常的に教員の専門性を理解した上で理学療法の理論を
教育分野に反映させること2.訪問教育との協働を通して、在
宅の重度重複障害児の主体性を尊重しながら安心・安全な教
育、地域医療、福祉に寄与できる意義がある。