繊維機械学会誌
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二次元の急絞り流路内における希薄繊維懸濁液の流れ
千葉 訓司村上 公啓山本 徹也中村 喜代次
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1991 年 44 巻 12 号 p. T247-T259

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抄録

二次元の急絞り流路におけるニュートン流体の希薄繊維懸濁液の流れをLipscombらが導いた構成式を用いて数値解析すると同時に, 矩形管急絞り流路内における繊維懸濁液の可視化実験を行い, 両方の結果を比較しながら繊維の含有率および繊維のアスペクト比の影響を調べた.さらに, 流動中に形態をほとんど変えない繊維の懸濁液と高分子液体の間の流れ模様の相違についても可視化実験結果を基にして検討した.繊維懸濁液の場合, 絞り部上流角部に生ずる渦は繊維の含有率あるいは繊維のアスペクト比の増加に伴い著しく成長する.しかし, 渦が大きく成長している場合でも, 渦の境界は比較的直線的であり, 高分子液体のように凸状にはならない.従って, 絞り部へ流れ込む主流は直線状になり, 剛直な繊維の懸濁液の流れは主流がワイングラス状になる高分子液体の流れと大きく異なる.さらに, 繊維懸濁液の場合, 慣性の影響の小さい範囲では渦の長さは一定で, レイノルズ数が増大すると渦は縮小し, 高分子液体の場合のようなレイノルズ数の小さい領域で流量の増大に伴い渦が急激に成長する現象は見られない.従って, 繊維懸濁液を用いて高分子液体の流れを適切に記述するためには, 剛直ではなく形態を自由に変えることのできる繊維を懸濁したニュートン流体をモデルとして考えることが必要である.急絞り流路内の流れに及ぼす繊維の含有率および繊維のアスペクト比の影響を数値解析と可視化実験の両方から調べた.そして, 繊維の含有率が低い場合には, 渦の長さとパラメータφμ/ηの関係が数値解析結果と可視化実験結果で定量的に一致することが確かめられたことから, ここで用いた構成式な含有率の低い懸濁液に対しては有効であるといえる.さらに, 数値解析からφμ/ηが増大するにつれて渦が成長し, そのため管軸上の第一法線応力差の増大が抑えられることも明らかになった.すなわち, 繊維懸濁液の場合にも渦の成長によるstress relief現象が現れる.なお, 繊維懸濁液の場合には細長比 (奥行き/幅) が大きい矩形管急絞り流路であっても三次元流れの傾向が現れることを確認した.この傾向は流量が低いほど, 含有率が高く繊維長が長いほど顕著になる.

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