抄録
本稿では、瞑想実践者が自身の瞑想の動機を問うことの重要性について述べる。マインドフルネス研究では、瞑想がヒトの認知や健康に及ぼす影響や、その作用メカニズムについて盛んに研究が行われている一方で、瞑想の動機の問題に焦点が当てられることは稀だ。しかし、著者はこれまでの経験から、本来的な瞑想実践のためには、「私は、なぜ瞑想をするのか?」と自分自身に問うことが不可欠であると考えている。瞑想の動機の背後には、自らが抱える苦しみ、またその苦しみの原因であるこの世界に関する無意識的で非自明な解釈が存在する。そして、私たちは、瞑想を通して、自身の無自覚な世界観に気づき、それを変容させることができる。それは、この世界そのものを一変させる驚きとともに生起する、大きな気づきだ。本稿では、著者の修行体験をもとに考察した、瞑想の動機の背後にある心理構造について述べ、神経科学から提案されている予測符号化理論に基づく解釈を与える。また最後に、瞑想実践者に向け、瞑想の動機を整理するための具体的方法を紹介する。