本報告は, 線ばねの成形加工中に発生する種々な要因別の加工きずのなかから, 圧縮コイルばねの加工きずを3種類, 引張コイルばねの加工きずを2種類選び, 加工きずが疲れ強さに及ぼす影響について調査したもので, この結果を要約すると以下の通りである.
圧縮コイルばねの一巻目コイルに発生する座巻端末部切り口との当りによる加工きずは, 疲れ寿命にそれ程影響を及ぼさない.
しかし, コイルの外周側や内周側の加工きずで, ショットピーニングのないものはきずの深さのレベルが線径の約3%程度になると疲れ強さは, きずのないものに比べて約50%低下する. なお, ショットピーニングを施すと同レベルのきずの深さでも低下率は10-30%にとどまる. さらに, 内周側のきずの疲れ強さに対する感受性は, 外周側より顕著である.
引張ばねのフック部内周側の加工きずは, きずの幅の深さに対する比 (w/d) が小さい場合には疲れ強さの低下は著しい. また, フック立上り部の加工きずは今回の実験では著しい差は認められなかった.