樹木医学研究
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論文
Neofusicoccum parvumによるモミジバスズカケノキ胴枯病
本橋 慶一吉野 聡一郎樋口 裕仁二階堂 由紀浮田 茂郎神田 多
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2016 年 20 巻 4 号 p. 187-196

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抄録

2003年8月,東京都および埼玉県内に街路樹として植栽されているモミジバスズカケノキに,胴枯症状を呈する病害が確認された.病徴は始め剪定された枝の切り口付近より幹にかけて認められ,紫褐色から褐色で,その周囲は黄色に変色し,幹にまで達すると水が滴るように下方へ進展する.その後,樹皮は褐色から淡褐色で鮫肌状となり,その一部は枯死して剥離,罹病枝全体が枯死した.剥離した罹病樹皮からは子嚢果および分生子果を形成する糸状菌の一種が観察され,それぞれ単胞子分離により分離菌株を確立した.得られた分離菌株をそれぞれ米ヌカ・フスマ培地で培養し,健全なモミジバスズカケノキの幹に有傷および無傷で接種したところ,子嚢胞子由来株を接種した有傷区にのみ初期病徴が再現された.また,病斑からは接種した菌が再分離され,病原性が確認された.病原性を示した子嚢果を形成する糸状菌は形態的特徴,rDNA ITS領域およびTEF1α遺伝子の塩基配列からNeofusicoccum parvumと同定された.

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