樹木医学研究
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論文
自然環境下におけるスギ黒点病菌Sydowia japonicaの感染状況
髙橋 由紀子升屋 勇人窪野 高徳
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2017 年 21 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

Sydowia japonicaはスギ雄花に選好的に寄生し,スギ花粉の飛散を阻害することから,スギ花粉症対策の生物資材として期待が寄せられている.本研究では,生物資材としての効果の持続性や二次感染の可能性評価のための基礎的情報を得ることを目的として,国内2箇所のスギ人工林において,S. japonicaの雄花序における感染率と感染雄花からの分離頻度を調査した.健全雄花序数と感染雄花序数を形成年ごとにそれぞれ計数し,各枝における感染率を算出した結果,雄花序の形成数と感染率は調査地毎にかなりばらついたが,当年感染雄花序数は当年雄花序数と前年以前感染雄花序数のそれぞれと正の相関があった.このことから,当年形成した雄花序が多く,前年以前に感染した雄花序が多いほど当年の感染数は多くなると考えられた.また組織分離の結果,感染雄花からのS. japonicaの分離頻度は,感染から2年以上経過すると低下したが,感染から2年後までは雄花内で生存可能であることが明らかになった.

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© 2017 樹木医学会
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