1999 年 3 巻 2 号 p. 67-74
マツ材線虫病における病徴進展のメカニズムを明らかにするため,強病原性線虫を接種して枯死したアカマツおよびクロマツ,即ち親和性組合せにおける生理的変化と,弱病原性線虫を接種して生残したマツ,即ち非親和性組合せにおける生理的変化とを比較した.その結果,材線虫病の病徴は,親和性,非親和性いずれの組合せにおいても生じる柔細胞の変性と部分的な水分通道阻害など,線虫の移動・分散に伴う前期の変化と,親和性組合せでのみ生じる形成層の破壊,水分通道停止,光合成・蒸散の低下など,線虫の増殖時に生じる進展期の変化とに区分された.病徴前期のマツでは,線虫の増殖と形成層への加害を抑制する未知の抵抗性機構(cambial resistance)が機能しているが,夏季の水ストレスと水分通道阻害の拡大によって光合成が低下するとcambial resistanceが失われ,病徴が進展期に移行するものと推測された.