Tropics
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植林と保全生物学に関連したボルネオ森林で の種多様性の研究
Richard B. PRIMACKPamela HALL
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1991 年 1 巻 2+3 号 p. 91-111

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抄録

熱帯多雨林を構成する樹種の大部分は,地域的にみるとそれほど個体数が多くはない。生態学的に問題になる点は,これら低い密度でしかない種がいかにして生存し続けてきているかを知ることである。一方,温帯の森林では優占種が存在するが,熱帯林では普通にみられる種が優占種にはなり得ない。この原因には,デモグラフィックな問題点が含まれている。これらの問題を解決するために,サラワクにおいて三つの対照的な混生フタバガキ林を選び, 1965 年から現在まで5年の間隔をおいて,樹木の生長,加入,生残について調査した。
 筆者らが選んだ方法論は,生物の多様性研究に際して最良の方法を強調するために,なんらかの計画的実験を選択するという類のものではない。筆者らは種とその出現度数を組み合わせることによって個体数が稀な種,少ない種,多い種に分け,それらのデモグラフィックなパターンを比較した。また,地域的に多い種について, 5 年間隔をおいた4 回にわたる連続した調査を行ない,そのデータを基にして個体群のサイズの変化を回帰法によって分析し,個体群の安定性を評価することができた。この方法を用いた長期にわたるデモグラフィックな研究によって,熱帯多雨林群落の短期的な安定性の程度を明らかにし,自然保護地の樹種の保護について実用的な提言をすることが可能になった。これらの研究は,択伐林との比較のための基本的なデータをも提供し,有効な森林管理計画を立てる一助にもなる。伐木と農耕活動がサラワクの森林破壊の現時点での主なインパクトであるために,このような努力は極めて重要である。

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© 1991 日本熱帯生態学会
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