Tropics
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タイの土壌劣化地における生物生産力の回復
II. タクアパ実験地における植物の成長に対する土壌温度,湿度,肥沃度の影響
櫻井 克年Buared PRACHAIYOTasnee ATTANANDANAVirat TANPIBAL荒木 茂長縄 貴彦岩坪 五郎依田 恭二
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1991 年 1 巻 2+3 号 p. 113-129

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抄録

タイの半島部,特にパンガ県(Phang-nga Province) にはスズ鉱山が多い。スズ鉱石を水で選別した跡地には,粒径によって選別された粘土,砂,喋の放棄地が残る。放棄地での天然更新は大変困難であり,人為的な植生回復の試みがなされている。そこで本研究は「放棄地計画, Waste Land ProjectJ (WLP) の一環として,パンガ県のタクアパ(Takuapa) の砂と礫の放棄地においてEucalyptus camadulensis を劣化地の植生回復のために植樹し,可能な農業の方法を示すためにキャッサバとパイナップルを栽培した。
土地の改良策として耕起・化学肥料施肥(1.67 ton/ha/yr) · City compost の施肥(1 2.5 ton/ha/yr) · およびチガヤImperata cylindrica のワラ(1 6.7 ton/ha/yr) によるマルチング(地表の被覆)を試みた。その中でマルチングが樹木にも作物にももっとも良い方法であった。その理由としては, i)最も暑い季節において土壌の最高温度を下げる,ii)一年中よい土壌水分条件を保つ,iii)マルチング材料そのものが植物に栄養源として利用され,また土壌微生物の生物的活動を活発化する, iv) さらに現場で雑草を集めることによって容易に実行できることが挙げられる。
不毛地の回復に関する限りは,チガヤによるマルチングと組み合わせたEucalyptus camadulensis の植栽がもっとも見込みの高い方法である。一方,実際的な農業方法の確立,少なくとも持続的にキャッサバとパイナップルの収穫を得ることを,ここのようなごく貧弱な土壌で実現するためには,さらなる努力が不可欠である。

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© 1991 日本熱帯生態学会
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