抄録
大陸の聞に位置する他の生物地理的領域と同様に,地中海には島が多い。その多くは,太洋島状である,例えば,それらの島々では動物相の移動が極端に選択的に限られて行われてきた。島峡(非大陸性)の脊椎動物相は,前期中新世(約2000万年前)から現在までのいくつかの地中海の島々で知られている。この論文では,地中海西部におけるそれらの動物相の概観を行う。次の点を強調したい。
1. 地中海西部地域の島々における地質系統
2. それぞれ異なった島々における動物相の変遷
3. 地中海島峡動物相のグローバルな解析
4. 島棋型進化のの極端な例の記録と解析
地質時代の記録からみると,地中海地域における始新世から今日までの古地理は,実質的に変化してきた。かつて島々で、あった幾つかの地域(例えばGargano, Baccinello, Murches) は本土とくつついていたことがあるが,現在では島峡型化石相を産する大陸の一部である。それらは“化石島(fossil island)” と考えられる。また,この時期には,いくつかの島の分裂(例えばGymnetic island) と同様に,いくつかの島と島の連結(例えばMallorca, Sardinia, Creteの島々)が記録されている。Sardinia, Mallorca, Menorca, Eivissaの島々ではいくつかの動物相の連続的な遷移を証明する長期にわたる化石記録が存在する。動物相の入れ替わり(白unal turnover) は,それぞ、れ異なった方法で,異なった分類群に及んでいる。先住の晴乳類は新しい侵入(事件)後絶滅する傾向にあった。地中海地域の島々の島峡型化石脊椎動物は特殊である。それらは典型的な太洋島の動物群(通常晴乳類両生類を欠如している)と,典型的な大陸の動物群(固有種を欠如している)とは異なっている。それらは3 つの特殊性によって特徴づけられている。
1) 哺乳類を食べる食肉類がいない
2) 両生類がいる
3) 大変に変わった分類群を含む高次分類、群の固有種がいる例外があるにせよ,地中海の島興型動物相のパターンを定義することは可能である。地中海の島峡型動物相を説明する進化的な変化は小さかった(例えば,体のサイズとそのプロポーションにおけるいくつかの変化ーそれらは種の実質的な生活様式を変えることは無い)。それでも,いくつかの例として,地中海の島々における脊椎動物の島峡型進化は,大変大きな変化を起こした(体のサイズやプロポーションのみならず,生活様式の実質的変化を意味する体構造においても変化する)。それらは,この論文において紹介する。地中海の島々における最も著しい進化的変化の例のいくつかは次のような例の分類群に起こった。両生類では,例えばSardinia 島の亜陸棲のHydromantes 属4 種が依然として島に生息しており,それらは,カメレオンのような伸縮自在の舌を使っている。鳥類では,大変大きなフクロウTyto gigantea , 巨大なワシタカ科Garganoaetus, 同様に,陸棲のおそらくは飛べない鳥Cygnus falconeri, 哨乳類ではBalearic諸島(Mallorca, Menorca) の更新世から産する奇妙なウシ科のMyotragus balearicus, Menorca の鮮新統から産する未記載のウサギの新属, Baccinello 島とSardinia 島の中新統から産する人類に似たヒトニザルOreopithecus bambolii, Gargano の鮮新統から産するHoplitomeryx matthei やDeinogaleryx koenigsswaldi,Cypros の更新世から産するコビトカバのPhanourios minor, さらに東部および中部地中海に散在する更新世の媛小型ゾウとシカなどである。このように,島峡型動物相の絶滅は解析された。絶滅は通常,動物相の入れ替わりに関係している。しかし,例外もある。最後の危機の波は,島への人類の移住(colonization) である。地中海の島々の現在の動物相は,基本的には人類が持ち込んだ哺乳類の種を含むがしかし通常それらは第四紀動物相に属する爬虫類の固有種を伴っている。