Tropics
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琉球列島の島の異方性と陸産貝類の種の多様性
山崎 和仁千葉 聡長漬 裕幸
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2000 年 10 巻 1 号 p. 93-101

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抄録
島に棲む生物の種数を決定している要因は非常に多様であり,生息、場所の物理的環境,種間の相互作用および歴史的過程(大陸移動や陸橋の形成など)が考えられる。ところが,面積変化というたった一つの幾何学的要因が種数変化と統計的に相関をもつことが経験的に知られており, Arrhenius の面積種数曲線と呼ばれてきた。このように経験則として広く知られる面積種数曲線を理論的に導くため,生物の拡散現象に島の長さと面積の間に存在する統計的なフラクタル幾何学特性を結びつけた新しいモデルを提出する。従来のMacArthur らの種数平衡モデルによると。面積種数曲線のべき指数は生物の移動能力,生息、場所の不均一性および各島の地理的位置関係などに依存すると考えられてきた。しかし,新たにここで提出されたモデルによると,面積種数曲線のべき指数は,本土から群島への生物拡散経路にも依存し,島形のフラクタル特性も種の多様性に関係していると考えられる。ここでは琉球列島における陸産貝類の面積種数曲線と琉球列島のフラクタル特性を求め,このモデルから琉球列島における陸産貝類の多様性や過去の拡散経路について考察する。さらにこれまでに報告されてきた数々の面積種数曲線のべき指数から,多くの生物の過去の拡散経路は島伝いの飛び石的な経路であったことが指摘される。
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© 2000 日本熱帯生態学会
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