Tropics
Online ISSN : 1882-5729
Print ISSN : 0917-415X
ISSN-L : 0917-415X
Documents of Symposium
琉球弧の古地理
木村 政昭
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 10 巻 1 号 p. 5-24

詳細
抄録
近年の潜水調査を含む海底の地質・地球物理学的研究成果をまとめることにより,琉球弧および東シナ海の海底地質の地史を明らかにした。琉球弧の形成過程では2つのステージが基本的である。第1 ステージには,東シナ海東縁域の地殻の薄化とそれに伴う琉球弧の東方への移動が,中新世後期から鮮新世中期の聞に生じた。その後, 160 万-130 万年前に,東シナ海域が広範に陸化した。これには現在の沖縄トラフのかなりな部分を含む。その時琉球弧はユーラシア大陸の一部であった。その後,更新世初期の今からおよそ130 万年前に,第2 ステージが発生した。そして現在の琉球弧(海底地形的には琉球海嶺)が形成された。琉球弧は2 つの主な時期に,台湾を通って中国大陸と陸橋としてほぼ連続していたとみられる(たとえば160 万-100 万年前と20 万-2.5 万年前)。この琉球古陸はおよそ2.5 万年前以降,地殻変動と後氷期の海面変動の両者によって段階的に沈水していった。琉球弧の水深10-35 m の海底には複数の鍾乳洞が発見された。それらの洞穴はウルム氷期以降に沈水したものである。そのうちの1 つからは石器が得られた。さらに6,000 年より古い時期に形成されたと推定される階段ピラミッドのような形をした人工的な遺構が与那国島沖の海底から発見された。そのような遺跡の存在は琉球弧の沈水過程を解明する手がかりを与えるものとなろう。
著者関連情報
© 2000 日本熱帯生態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top