マレーシアサラワク州のパカム森林保護区(BFR) 内の焼畑後の荒廃地において,植林による生態系修復試験が1996年から行われてきた。焼畑後の荒廃地における修復機能を評価するためには,まず現在の荒廃地土壌の状態を明らかにする必要がある。本研究では,荒廃地における土嬢の形態学的,物理化学的,鉱物学的,荷電特性を調査した。
荒廃地における土壊の養分含量は極めて低く,焼畑後の土壌侵食のため残存林内の土嬢の次層程度であった。荒廃地の土壌は土嬢の圧密によって残存林よりも硬くなっていた。荒廃地の土壊は,土壌のPZSE(荷電ゼロ点)が低いこと,永久荷電をもつ2:1 型粘土鉱物の流亡によって変異荷電粘土鉱物が卓越していること,酸化物含量が低いことから,強風化土壊の特徴を示した。土壌の特性は,土壌侵食後容易に劣化し,その場所の地形と水の動きによって改変されていると考えられた。一度植生が破壊されると,十分な降雨と高い気温の状況下にあるが,植生は本質的に肥沃度の低い土嬢状態では容易に再生することはできないと思われた。