Tropics
Online ISSN : 1882-5729
Print ISSN : 0917-415X
ISSN-L : 0917-415X
中央力リマンタン,マンクトゥップ川集水域のラへイ周辺での泥炭の分布と化学特性
原口 昭島田 沢彦高橋 英紀
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 10 巻 2 号 p. 265-272

詳細
抄録

インドネシア中央カリマンタン州都パランカラヤの北東に位置するLa hei 近郊のMangkutupJII 流域において,泥炭の分布とその化学的な特性についての調査を行った。この調査地において, MangkutupJII にほぼ平行な16 ∞ m のライントランセクトを設定し,泥炭層の厚さを測定した。その結果,泥炭は周囲より10m程度低くなった谷地形の地域に限って分布していることが明らかになった。一方,河川に対して垂直方向に設定したライントランセクトに沿った泥炭の厚さの測定結果は,河川|から150m 離れた位置に泥炭層の最厚部があり,層厚は7.73 m に達していた。泥炭層には炭化した層が数層含まれており,泥炭層の形成過程で湛水と渇水が繰り返されていたと考えられる。
また,泥炭の化学性の深度分布について,河川に垂直なライントランセクト上の数地点で測定した結果,深度5m を境に上部と下部で著しい差が認められた。pH と電気伝導度は5m 以下の層で著しく高く,またイオン濃度は,多くのイオン種で5m 以下の層で最大値を示した。酸化還元電位は2m の深度で最小値を示したが,泥炭層全体を通じて酸化的であった。これらの結果から,泥炭層下には基底流があり,それによって塩や酸素の泥炭層下部への供給が起こっている可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2000 日本熱帯生態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top