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ブラジル・アマゾン地域における河川沿岸住民による森林管理の可能性
一パラ州グルパ郡における事例研究一
原後 雄太
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キーワード: アマゾン
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2000 年 10 巻 2 号 p. 287-312

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抄録

ブラジル・アマゾン地域では,森林の消失・荒廃を防ぎつつ,森林を適切に管理する方法として,森林資源に生計を依存しながら生活している地域住民による自主的な森林の保護·管理システムの導入が徐々に図られつつある。地域住民による自主的な森林管理システムは,どのような契機·背景といった前提条件があるときに導入されるのであろうか。
アマゾン地域における地域住民は基本的に, 1) 先住民, 2) 河川沿岸住民(ribeirinho),3) 採取住民, 4) 小農民の4 類型に分類される。本研究では,河川沿岸住民をとりあげて,アマゾン河口部に位置するパラ州グルパ郡における4 村落を対象に分析·検証を行った。
地域住民による森林管理システムは. 1) 森林資源、に生計を依存して生活する「森林住民J が存在すること, 2) 資源開発の圧力にもとづく資源の枯渇・劣化がみられること. 3) 生計を依存する森林資源の保全を目的とした地域住民の社会的組織化のフロセスがあること,という三つの前提条件のあるときに導入されると仮定される。
グルパ郡における河川沿岸住民は. NCO ·研究機関·援助機関などの協力を得て, 1980 年代後半から森林管理システムの導入を始めた。郡内のカフタ・ドフクルイ村,ジョコジョ村,サンセパスチャン村,グルパイ村の4 村落では,地域住民による森林管理システムが導入されているか,もしくは導入の可能性が議論されている。
本稿では,これら4 村落について上記の前提条件の有無を検証しつつ,合計20 世帯について森林管理システムの導入状況のほか,世帯動態,土地の保有·利用,森林産物の採取·利用,栽稿作物の作付け,家畜飼育などの状況を考察した。
さらに,それぞれの世帯収入を1) 森林産物による収入. 2) 栽培作物による収入. 3) 雇用·年金などその他の収入に3分類して,総収入に占める森林産物の収入割合を「森林資源への依存度」と定義しつつ,各村落について「森林資源への依存度」と森林管理システムの導入との相関関係について分析した。その結果r森林資源への依存度」が高い村落ほど,生計手段を保全・保障する白的で森林管理システムを導入しようとする傾向が高いことが立証された。

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© 2000 日本熱帯生態学会
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