Tropics
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原著論文
インドネシア西ジャワ州ボゴール植物園におけるダイフウシホシカメムシとその種特異的捕食者の個体群動態
西田 隆義中村 浩二Woro A. NOERDJITO
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2001 年 10 巻 3 号 p. 449-461

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抄録

インドネシア西ジャワ州にあるボゴール植物園にはイイギリ科の果実を専食するダイフウシホシカメムシ(Melamphaus faber) とさらにこれを専食するこシダホシカメムシ(Raxa nishidai) の孤立個体群が存在する。両種の個体群を1990年から1998年にかけての9年間,断続的に追跡した。両種ともに,雨期・乾期にかかわらず常に繁殖活動を行っていた。ダイフウシホシカメムシの個体群密度は孤立個体群にもかかわらずかなり安定しており,一方ニシダホシカメムシは非常な低密度にも関わらず調査期間中存続した。両種ともに移動能力はきわめて低く,かつ孤立個体群で、あったため移出や移入はないものと考えられた。ダイフウシホシカメムシ個体群の変動パタンは餌資源の変動パタンと非常にうまく同調していたが,一方,捕食者であるニシダホシカメムシはダイフウシホシカメムシの個体群動態にあまり影響を与えてはいなかった。すなわち,ダイフウシホシカメムシ個体群の変動は主に餌資源の変動によって規定されているものと考えられた。餌資源であるイイギリ科の種子の生産量は年により大きく変動したが,ダイフウシホシカメムシが実際に利用する地上に蓄積した種子量は比較的安定しており,これがダイフウシホシカメムシの個体群動態が安定している理由のーつと考えられた。

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© 2001 日本熱帯生態学会
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