2001 年 10 巻 3 号 p. 489-495
カザリショウジョウパエのオスは交尾のためアサガオの花になわばりを形成する。今回, 我々はスカラミ(インドネシア・スマトラ島)において本種の日周期活動となわばり制について調べた。スカラミでは,アサガオの花の寿命は約半日でほぼ日の出時に開き、午後から夕方にかけてしぼむ。本種はオス,メスともしぼんだ花内で夜を過ごし,翌日,朝から夕方にかけ出ていく。一方,新しく開いた花の上の個体数は,朝から夕方にかけ増加する。新しく聞いた花において,オスは,午前中は普通なわばりを保持しているが,午後,花上の個体数が増えてくると,なわばりを守ることができなくなる。新しく開いた花においてなわばりを保持しているオスとしぼんだ花に留まっているオスを朝に採集し,その体サイズを比べたところ,前者の方が大きかった。このことは,大型のオスはなわばり争いに有利であり,新しく開いた花になわばりを保持するため,より早くしぼんだ花を離れることを示している。実際,大型のオスの方がなわばり争いに有利であることが,室内実験により示された。一方,メスにおいては,体サイズと日周期活動にはなんら関係が見られなかった。夕方には,オス,メスともほとんど活動せず,花上に静止していた。メスは朝から夕方にかけ,その日に開いた花にのみ産卵する。花間の卵の分布はほぼランダムであった。