抄録
日本の照葉樹林とインドネシアの熱帯多雨林における林床での葉部リターの分解に及ぼす外部環境の影響を,同じリターを用いたリターバッグ法による1年間の観測結果に基づき考察した.照葉樹林において分解が冬から始まった場合,その後1年間の炭素重量の減少パターンは第1近似としてひとつの指数関数曲線で近似することができ,材料とした照葉樹林の5種類のカシ類の業部リターの平均分解率は 0.70±0.13y-1で、あった.しかし,3ヶ月間隔での評価では分解率に季節変化が現れた.一方,熱帯多雨林においては,分解初期の3ヶ月間での重量減少がとくに大きかった.また,観測期間中に発生した2ヶ月間に及ぶ異常乾期中では分解率が大きく低下した.異常乾期を除く期聞から推定した平均分解率は照葉樹林のカシ類の葉を基質とした場合は 1.62±0.24y-1で,両観測地の年平均気温から推定した温度係数は,5 種の平均で Q1O=2.19±0.26で、あった基質のC/N比は重量減少とともに減少し,分解過程の後半では両森林において基質の違いにかかわらずC/N=20で一定となる傾向を示した.これら分解率とその季節変化,さらにC/N比の変化に基づき両森林生態系の林床での葉部リターの分解過程の特徴を考察した。