Tropics
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原書論文
2 種のミツバチによる熱帯雨林の林冠での採餌:ミツバチの採餌高度に対する固執性と樹木の遺伝子交流範囲
David W. ROUBIK井上 民二Abang Abdul HAMID
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1995 年 5 巻 1+2 号 p. 81-93

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抄録
サラワク州ランビル国立公園内に建設された林冠観測システムを利用して,ミツバチの林冠での採餌行動を人工給餌器を用いて調査した。給餌器は地上から林冠上部の聞のさまざまな高さに設置し,ミツバチの給餌器聞の移動をマーキングによって追跡した。ボルネオミツバチApis koschevnikovi とオオミツバチApis dorsata の偵察係は約220m はなれて新たに設置された給餌器を6分以内に発見し,そこへ,同じ巣に属する運搬係の働きバチ数千頭を2 日以内に動員した。同じ木に反復して訪問する場合,同じ高さにやってくる割合は7 割と高かった。同じ高度に訪問しない場合,上下ともに訪問が起こった。別の木に新たに訪問する場合には,この割合は55 から60% に低下した。同じ高度を再訪問しない場合,オオミツバチは下方向に,ボルネオミツバチは上方向に訪問がシフトする傾向が強かった。最高640 m 離れた地点でマーキングされた個体が再捕されており,ミツバチによる遺伝子交流範囲は0 .3 km2 以上であった。この調査から,地上から70m 以上に渡って分布する熱帯雨林の林冠内をミツバチは迅速に移動することができ,どの層の花をも利用していることが判明した。
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© 1995 日本熱帯生態学会
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