Tropics
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原書論文
マングローブ、Avicennia marina の塩分吸収と排出
Mai Sy TUAN二宮 生夫荻野 和彦
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1995 年 5 巻 1+2 号 p. 69-79

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抄録
Avicennia marina の塩分調節機構をしらべるため, 235 本の実生苗を0, 25, 50, 75, 100, 125 および150% の人工海水を培養液として12 カ月間栽培し,各処理ごとに葉,幹,根の塩分濃度および葉からの塩分排出速度を測定した。同時に浸透圧調節機構をあきらかにするため,葉,幹,根の水ポテンシャルをあわせて測定した。Avicennia marina は大量のナトリウム(Na+) と塩素(Cl-)を培養液から吸収した。樹体内の塩分濃度は培養液の塩分濃度が増加するとともに増加し,通常の海水レベルになるとほぼ上限値を示した。樹体内の塩分濃度は培養液の塩分濃度よりも常に高いレベルに維持されていた。このことにより樹体内の浸透圧は常に培養液の浸透圧よりも低い値を保っていた。塩分排出速度は葉の塩分濃度と正の相関関係にあった。培養液の塩分濃度が高まると塩分排出速度が高くなったが,このことは樹体内の塩分濃度の制御に有効であると考えられた。Avicennia marina は樹体内に塩分を取り込むことによって通常の海水濃度付近までの条件下で吸水力を維持する一方,葉から塩分を排出させて樹体内の塩分濃度を下げるという巧みな塩分調節機構を備えていた。このことからA. marina は高塩分濃度環境においても生存可能な樹種であるという結論が得られた。
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© 1995 日本熱帯生態学会
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