Tropics
Online ISSN : 1882-5729
Print ISSN : 0917-415X
ISSN-L : 0917-415X
原著論文
熱帯低湿地の地形発達
古川 久雄
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 6 巻 3 号 p. 163-188

詳細
抄録

東南アジア島嶼部の沿岸には海抜高度7m 以下の低湿地が広大にある。スマトラ東岸パタンハリ川流域で行った調査の内,地形発達史を報告する。
スンダ海周辺の台地は約6000年前の1.9m の海面上昇により沈水し,低湿地となった。気候は多湿化し,熱帯多雨林が拡大し,かつての台地基盤の上に木質泥炭が堆積した。海岸部では砂州で閉塞されたラグーンや干潮干潟に汽水泥が堆積し. 1500年以前の海退で干陸した地表にも2~3m の薄い泥炭が堆積した。
微地形と堆積物に基づく地帯区分は次の通りである。
(1) 氾濫帯:中流部から流れ込む河川が氾濫·蛇行をくり返す部分。鮮新・更新世の基盤の上にシルト·粘土の自然堤防と,後背地富栄養泥炭が発達。(2) 中央帯:鮮新·更新世基盤の上に10m を越える厚い木質の貧栄養泥炭が堆積し,高いビートドーム地形が発達。泥炭基底部はシダ,イネ科草本に富み,上部は湿地林植生遺体から成る。(3) 感潮帯:海岸に平行した数列の砂州列と堤間低地の平坦面から成る。堤問低地は汽水泥の要刻じ程度から,古期陸化ラグーンと新期陸化干潟に分けられる。いずれも地表は木質泥炭が覆う。この地帯区分は地形発達史そのものである。

著者関連情報
© 1997 日本熱帯生態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top