Tropics
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照葉樹林の世界的分布
田川 日出夫
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1996 年 6 巻 4 号 p. 295-316

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抄録

夏雨暖温帯気候,亜熱帯及び熱帯多雨気候に成立する照葉樹林の世界規模の分布をこれまでに報告された数多くの文献を基に調査した。この森林は主としてブナ科,クスノキ科,ツバキ科,モクレン科,マンサク科などから構成されている。この森林の樹木は共通して革質の平滑な葉をもち,その表面から太陽光を反射して光る特徴をもっている。この森林は温帯では低地に分布するが,亜熱帯や熱帯では低山地帯や高山地得に分布する。その結果この森林は多様な名称でよばれている。吉良(1977) は照葉樹林にlucidophyll forest という新しい呼称を与えているが,照葉樹林以外でも照葉樹が見られるので,筆者は当該の森林をlucidophyll oak-laurel forest という呼称を与えたい。
照葉樹林はアジア,ニュウギニア,マカロネシア,米国東南部,中央及び南アメリカの温帯,亜熱帯,熱帯に広く分布している。ナンキョクブナ林は唯一ニュウギニアで照葉樹林とともに同所的に分布している。そこではナンキョクブナ林は通常照葉樹林帯より上部にあるが, 一部で照葉樹林帯の下にも出現する。ナンキョクブナの葉の特性からみて,ナンキョクブナ林は南半球で進化繁栄した照葉樹林と考える。この考えが妥当なら,照葉樹林の分布は,ナンキョクブナが落葉樹となっているタスマニアを除くオーストラリア,ニュウジーランド,落葉樹となるパタゴニアのナンキョクブナ林を除く南アンデスにまで広がり,大きな森林群系となる。

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© 1996 日本熱帯生態学会
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