Tropics
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済州島を含む韓国の照葉樹林の生態学的特徴とその伝統的維持管理法
任 良宰
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1996 年 6 巻 4 号 p. 393-411

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抄録

韓国における照葉樹林の分布は南部海岸域と済州島を含む南西島嶼に限られる。多くの文献や野外データによると,照葉樹林の種組成や景観などの生態学的特徴は植物の侵入定着の歴史,気候条件特に冬季の低温と地域的な地形あるいは土壊条件が関係している。生態学的特徴は隣接する西南日本の照葉樹林と比較して,基本的には標徴種が類似し,種の組み合わせが部分的に異なっている。日本とは異なる環境条件のため,いろいろな林分,しかも日本と同じ群落でさえも種の組み合わせに違いがあることが,多くの研究者によって報告されている。
Yim (1977a) によると,韓国における照葉樹種11 穫の分布北限の寒さの指数の平均値を求めたところ-6.3°C月,現存植生図に基づいて北限の照葉樹林の寒さの指数値を求めると-8°C月であった。天然記念物として保護されている木島,うる山(寒さの指数- 9.3°C月) ,内蔵山の照葉樹林について検討すると,寒さの指数-10°C月が韓国における照葉樹林の分布限界であることが分かつた(Yim,1977b)。しかし,済州島ではツバキが標高630 m まで,スダジイが570 m まで分布しており,暖かさの指数は100 - 95°C月(寒さの指数は凡そ- 4°C月)であった。このことは済州島では冬季の寒さよりも,生長季の暖かさのほうが大きな影響を持っていることを示している。
韓国における森林の維持管理法は,伝統的な方法と現代的な方法との二つがある。前者では文化的な背景と日常生活からくる精神性,あるいは人間の本質に基づくもので,後者は森林の管理に関する政策と技術に基づくものである。

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© 1996 日本熱帯生態学会
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