抄録
熱帯諸国において,土壌荒廃地を修復するためには,残された自然林の状況を様々な角度から明らかにしておく必要がある。この報告は,マレーシア·サラワク州ランビル国立公園内に設けられた8haプロットにおいて実施され,野外においてプロット内の地形と土壌硬度及び野外土性の分布を調べ,植物の根の阻害が予想される十壌の マクロな分布を把握しようとするものである。さらに,8haプロット内の尾根部と谷部において,土壌水分と土壌温度のモニタリングをおこなった。同時に,より詳しく土壌の特徴を把握するために,尾根部と谷部で採取した十壌の理化学性を調べた。
尾根部では,土層が厚く,表層でのみ有機物含量が高かった。土壌水分は著しく変動しており,土壌は期間を通じて乾いていた,谷部では,土壌水分は降雨の後でさえ比較的安定していた・谷部では,周囲から多くの水の供給を受けるため,細粒質画分と養分流亡が進んでいた。
地形調査の結果から,プロット内の地形は大きく3つのエリアに分けられた。
1) 急傾斜エリア: 土壌と植生は,土壌侵食や地滑りによってしばしば変化している可能性がある。土性はsandy loam, loamy sand, loamであった。レキ質が深さ20-40 cm付近の次層で見つかり,根の下層への伸長が困難であると考えられた。
2) 緩傾斜エリア: 土壌と植生は長期間安定である。土性はlight clay, heavy clayであった。粘土物質が,有機物によって十壌が細分化され,また20 cm以深に集積していた。
3) 尾根エリア: 土壌と植生は地形的には安定であるが,水分状況が他の地点とは異なっている。土性はclay loam, sandy clay loamであり,急傾斜エリアと緩傾斜エリアの中問的なレンジであった。土壌硬度の観点からの物理的な阻害は確認されなかった。しかし, 降雨の少ない期間には,土壌水分が不足するため,根の伸長を含め生育が遅くなる可能性があると推測された。