京都先端科学大学経済経営学部論集
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経済学領域
戦う女性マネタリスト、 アンナ・ジェイコブソン・シュウォーツ
宮川 重義
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2024 年 2024 巻 7 号 p. 1-37

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抄録

あのクルーグマンをして、「世界で最も偉大な貨幣経済学者の一人」と言わしめ、女性経済学者のパイオニアとして大きな足跡を残した、アンナ・ジェイコブソン・シュウォーツの生涯とその研究について論じる。ユダヤ移民の子供として生を受けたシュウォーツは貧しいながらも両親の寵愛を受けバーナード大学に進学し、ゲイヤー教授との出会いから経済学者を志すことになるが、その道は決して平坦なものではなかった。

彼女はゲイヤー教授との出会いから、歴史データを丁寧に発掘し、読み解くという地味な作業の重要性を習う。後にNBERに職を得てそこで生涯経済学者としての仕事に専念することになるが、歴史分析を行う地道な彼女の研究姿勢に、ミルトン・フリードマンの目が留まり、共同研究を行うことになる。ここから彼女の研究者、マネタリストとしての道は大きく拓く。フリードマン自身、当時まだそれ程著名な研究成果を上げていなかったが、このシュウォーツとの共同研究はMonetary History(1963)、Monetary Statistics(1970)およびMonetary Trend(1982)の3部作として結実し、フリードマンの代表的研究となる「自然率仮説」の研究を生みだし、一挙にノーベル賞に繋がることになる。まさに、シュウォーツあってのフリードマンと言っても過言ではないであろう。フリードマンはその晩年に彼女との共同研究は最も理想的な研究であったと述懐している。本稿では彼女が最近のわが国のデフレ下の金融政策に多大の影響を及ぼしたマネタリズムの展開にどのように貢献したかを論ずる。

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