抄録
本研究の目的は,比例的推論の進展が十分ではないと思われる児童の学習指導への示唆を得るため,幼児期の比例的推論の可能性や比例的推論が機能する条件等を明らかにしていくことである。
年長児と小学校2学年児童を対象とし,本研究の目的に対し特徴的な様相を示したのべ5回のインタビューを取り上げ,子どもの問題解決の様相を分析・考察した。
その結果,以下の2つの困難点が見い出された。
1点目は,年長児,小学校2学年児童も,問題場面に示された数量の対応関係を捉えて1 とみるべきまとまりを作ることに困難があったことである。2点目は,1つのユニットが想定できたからといって,そのユニットをもとにしてノルム化ができるとは限らないことである。
これらの困難点について,必要の指導を行うことにより打開できることも見えた。
それから,児童にとって最もつかみやすい1対1対応への着目をすることにより,Scalar ratiosによる比例的推論の進展プロセスからFunctional ratesによる比例的推論への進展の道筋を作り出せる可能性を見い出すことができた。