2023 年 54 巻 p. 23-34
本研究の目的は,三角比における割合の側面の捉えを重視することで三角比の意味理解の進展とともに,割合の意味理解の進展を図ることである。 三角比の学習は辺や角へ着目し,その関係を明らかにしようとすることで,図形の見方を 豊かにし,計量の手段を拡げるものである と捉えている。 加えて,ある辺を基準としたときに,他の辺がどのようになっているかという関係を表したものであるため,その意味理解を適切に行うことは割合の理解を進展させることに他ならない 。これらを踏まえ,第1学年 「図形と計量」 の学習場面において比の見方の変容をもとにした三角比の意味理解に着目した授業を構想・実践し,その際の生徒の反応を分析した。このことから,三角比の意味を割合の見方で意味づけることで次の3点が示唆されることが明らかとなった。(三角比を割合で意味づけることでその意味に基づいた学習が展開可能であること。 (三角比の見方を対応比から形状比へと変容させていく中で割合の概念進展を促すことができる可能性があること。(意味に基づく学習の中で三角比の拡張を生徒自らが考察し,拡張による統合を生徒が実感する学習として展開できること。